夢の跡


ここで7日間過ごした。
ここで5夜寝た。
終わってみれば、あっという間に過ぎ去った日々。でも、テントを片付けてみれば、こんな跡が残った。テントの外側の芝は蒼く、テントの下敷きになった芝は枯れて薄茶色になった。ベースキャンプの各地に四角いこの状態が作られた。
大忙しの撤収作業の中、こんなことに気づかなかった人もいたかもしれないけれど、僕たちは確実に自然に対してダメージを与えていた。「来たときよりもきれいに」という合言葉に、僕らはベースキャンプを片付けた。でも、人がそこにいるだけで戻ることが出来ないこともある。
人は、他人のちょっとした一言で心が折れてしまうことがある。テントの下敷きになった芝は、きっと僕らが来る前のような緑色を取り戻すだろう。でも、中には僕らの1歩で踏まれただけで極端なストレスを感じて枯れてしまう草もあるかもしれないし、さわられたことで消耗して死んでしまった虫がいたかもしれない。
テントの跡を見てそこまで考えなくてもよいけれど、僕たちが夢のような日々を過ごしたあの場所は、まだ再生までに時間を必要としている。元と同じような景色に戻るには、僕らから海洋道中のホットな思い出がゆっくり冷まされるのと同じような時間が必要かもしれない。