濡れ落ち葉

台風12号の接近で、今日は雨が激しく降ったり晴れ間が覗いたりと、不安定な天気。仕事を終えて車のところに行ったら、たくさんの濡れ落ち葉が貼り付いていた。走り出すと、風圧に負けてハラハラと剥がれて後方に飛んでいく。でもしっかりと貼りついてびくともしないものもある。スピードを上げてもコーナーを曲がっても剥がれない。その粘りに敬意を表して写真を撮った。

濡れ落ち葉というと、掃除をしようと箒ではいてもアスファルトに貼り付いてなかなか剥がれないしぶとさから、悪い意味でしつこさや粘り強さに対して使われる言葉だ。でもここ20年ぐらいは、定年退職後の夫を指す言葉として定着しているらしい。ネットで検索して知った。
退職して仕事が無くなった夫が、妻が出かけようとすると「オレも行く」と言って誘ってもいないのに付いて来てしまう。来ないで頂戴、と言っても、何だかんだと理由をつけてくっついて来る。それが、振り払っても振り払っても剥がれ落ちない濡れ落ち葉のようだということで使われるらしい。
なんだか哀れだ。やがて来る日の僕の姿にならないよう注意しよう。

車のガラスに張り付いていたこの濡れ落ち葉。春夏はサクラの木で青々と茂る葉の一員として生まれ、せっせと光合成をしてでんぷんを作り出し木に与え、二酸化炭素を酸素に替えて僕らの呼吸を助けてくれていたはずだ。でもご覧の通り虫に食われ、季節が過ぎると葉緑体を分解され、黄色いカロチノイドが取り残された。そして台風の雨に濡れ、台風の風に飛ばされてたまたま張り付いた場所が、僕の車の窓だった。
車が走る風圧には耐えていた濡れ落ち葉だったが、やがてザーと降り出した雨のために動かされたワイパーにはかなわなかった。ワイパーは竹箒よりも濡れ落ち葉に対して厳しい態度で接する。剥がされた濡れ落ち葉は後ろに飛んでいった。まただれかの車に貼り付いただろうか、それとも道路に落ちてしまっただろうか。