甘い赤飯

北海道の十勝出身の妻にとっては、子どもの頃から赤飯と言えば甘い食べ物だったそうだ。確かに音更のスーパーマーケットには甘い赤飯を売っている。音更だけでなく、十勝のあちこちどこも赤飯は甘いのが普通だったと言う。甘納豆で作るので、特に豆が甘いそうだ。あるとき、どこかで甘くない赤飯を食べて驚いたら、父親から「本州の赤飯は甘くない」と聞かされたということだ。ちなみに千葉出身の僕にとって、赤飯といえばもちろん甘くなく、胡麻塩を振りかけて食べるどちらかと言えば塩味のものという印象だ。
さて、音更のスーパーで売っていた赤飯のラベルを見ると、「赤飯(甘納豆)」と書かれている。わざわざ(甘納豆)と書いてあるのは、どういうことだろうか。(1)他に、甘納豆を使っていないけど甘い赤飯があるから。(2)甘くない赤飯が他にあるから。答えはよく分からないが、同じ売り場に別の種類の赤飯は置いていなかった。
ちょっとネットで調べてみると、甘い赤飯を食べるのは、北海道、青森県岩手県山梨県ということらしい。山梨県だけが遠く離れている。甘くない赤飯を食べるのが普通である千葉の男と結婚し、更に遠い山梨県に来てしまったが、そこで故郷と同じ甘い赤飯にめぐり合った妻の喜びはどれほどだったか、僕はよく知らない。
ところで、もしかしたらこの北海道の甘い赤飯のルーツが山梨県かもしれないというから驚きだ。この考え方の鍵は岩手、青森にある。平安時代の末期、山梨県に領地を得た南部光行は、その後奥州討伐で活躍し今の岩手北部から青森東部にかけての領地を与えられる。それが元で山梨県にも青森県にも南部町がある。このとき、南部氏だけでなく甘い赤飯も一緒に山梨から伝えられたというのだ。そして明治期の北海道開拓に伴って甘い赤飯は津軽海峡を越えて青森から北海道へ渡っていった。こんな筋書きだ。なかなか説得力がある。