キングコング対ゴジラ

今日は久しぶりに本格的な雨降りだった。晴れていれば小瀬スポーツ公園で開催される県民祭りに子どもたちと行くつもりだったが、土砂降り。というわけで、気になっていた「やまなし映画祭」に行ってきた。
映画祭そのものが楽しみというわけではない。「キングコング対ゴジラ」を見たかったのだ。ちなみに他の作品にはまるで興味が無い。
子どもの頃にはゴジラ映画によく連れて行ってもらった。ゴジラ映画というと専ら父親といっしょだった。見に行く小屋は千葉の竹沢東宝がほとんどで、当時はかなり混んでいた。キングコング対ゴジラが公開されたのは僕が生まれる前年のことだから、そのときは見られるわけないが、僕が子どもの頃は、ゴジラなどの東宝怪獣映画がよくリバイバル上映されていたので見ていたかもしれない。なぜよく覚えていないかというと、怪獣百科みたいな本や雑誌を何冊も買ってもらって読んでいたので、見ていない作品でも見た気になっていることがあるからだ。
キングコング対ゴジラ東宝創立30周年記念作品として製作されたというもので、監督は本多猪四郎特技監督円谷英二という、ローランド・エメリッヒも尊敬しているという特撮映画好きにとっては黄金コンビだ。
今回は、映画祭というだけあってちゃんとフィルムでの上映だった。ケースが古めかしく見えたので、いつごろのプリントなのかと聞いてみたら、デジタル処理されたものなのでわりと最近のプリントだということだ。
この名作の内容についてあれこれ言うのは下衆な趣味だと言われそうだが、ちょっとだけ。アメリカ映画生まれのキングコングと日本映画生まれのゴジラが戦ったら、どっちが勝つのか。僕らにとっては凄く興味のあることだった。当時、キングコングはテレビアニメにもなっていて、僕が幼稚園のときに使っていた弁当箱にもキングコングのプリントが付いていた。だから、日本のゴジラだけでなくキングコングも子どもたちにとっては身近な怪獣だった。でもそこに大人の事情が割り込んでくる。米ソ冷戦時代のこの頃、日本は今以上にアメリカの属国状態だった。しかもアメリカでも人気のあり、輸出されているゴジラ映画。どちらが勝つわけにも行かなかった。TPPが話題の今年にはぴったりだ。そして、原発事故があったこの年に、水爆実験の放射線を浴びて巨大化したゴジラを見るのは意義深い。ゴジラは人間が生み出した怪物だ。それが人間の暮らしを破壊する。生みの親はそれを制御できない。
映画館までもビデオプロジェクターで上映しているこの時代に、後方にパタパタと映写機の掻き落とし音を聞きながら、デジタル処理できれいになった往年の名作を見られたことはとても良い気分だった。今日は雨降りに感謝しよう。