ホトケノザ

春近し、ということで花の写真。ホトケノザは春に多いけれど、夏にも秋にも見られるから春らしいとは言えないかもしれない。道端、庭、畑など、人間の生活のすぐそばにいつでも生えている草だから、花を咲かせていたとしても簡単に踏みつけられる、典型的な「雑草」だ。
ところで「春の七草」の中にホトケノザがあるが、この草ではない。七草の方のホトケノザは「コオニタビラコ」という別の草で、どいういうわけか別の名前で呼ばれてしまったようだ。僕はこの事実を知っってからまだわずか十年ぐらいしか経っていない。
もうすでに十年以上も前のこと、僕は野草を食べようと思っていろいろな草を摘んできた。春の七草にあるナズナハコベ、ツクシ、タンポポも摘んだ。そして、そこらじゅうにいくらでもあるホトケノザもたっぷり摘んでいた。春の七草にあるのだから食べられない訳は無い、そう思ったからだ。でも、ナズナホトケノザは少し筋っぽく思えて天ぷらにしてみた。天ぷらはたいていの食べ物を美味しく変身させてくれる魔法の料理法だからだ。
僕が揚げた天ぷらの夕飯、妻は少しもホトケノザの天ぷらを食べようとはしない。結局、僕が全部食べることになった。それでも僕はその日のうちには食べきれず、翌朝にも食卓にのぼり、ついに食べきった。味の感想としては、不味いとまでは言えないが美味いとはとても言えない、という感じで、しかも何だか腹がもたれてたくさん食べる気にならなかった。
後でこのホトケノザ春の七草ホトケノザとは別物だと知り、図鑑によっては毒があるとまで書かれていてビックリした。腹がもたれたのが毒のせいなのか天ぷらの油のせいなのか、あるいは別の理由なのかは不明だが、以後ホトケノザを食べることはやめた。そしてそれ以来、ホトケノザを食べたことは僕のささやかな武勇伝になった。春の七草の話題になったとき、盛り上がったらちょっと話してみたりする。でもまあこれで一層盛り上がるということも無いから、人から見るとたいした武勇伝ではないようだ。