春の夕焼け

季節も暖かくなり、桜の花も咲き始めた。そしてこんなモワ〜ッとした春らしい夕焼けが見られるようになった。
この写真を横目にテレビを見ていたら、いすゞ自動車のCMが流れた。「どーこ〜までも、どこ〜までも、走れ走れいすゞーのトラックー」というやつ。あれはつくづくTVCMの名作だと思う。見たことがある人はきっと覚えがあると思う。というよりも聞いたことがある人はきっと覚えている。とても単純なつくりなのにとても印象的、とくに歌の印象は強い。今日見た近頃やってるバージョンは、遠くに山が見える朝焼けの景色の中の一本道を向こうからトラックが走ってきて通り過ぎるというやつ。カメラの視野は最初から最後まで固定で、トラックが通り過ぎるのは一瞬なのでいすゞのエンブレムすら確認できないほど。商品名も歌の中で2回か3回しか出ない。でもなんかいいなーと思わせる。
いすゞ自動車のCMには僕が印象深く思っている作品がある。性能とか機能とかそういうものを訴えるのでなく、気分良さそうだな、と思わせてくれた。なんと言っても有名なのがFFジェミニのCM。水色と黄色の二台のジェミニがパリだかどこだかの街中を、くっついて走る。それがまるで恋人同士が寄り添っているかのように見える。噴水のところで「街の遊撃手」というキャッチフレーズが入って、二台は並んでくるっと回って停まる。とにかくかっこよくて、なんだか羨ましくなってしまう。このCMはとても好評だったようで、その後もこの路線でCMのつくりはだんだん派手になっていった。中にはジェミニが地下鉄の階段を降りてプラットホームを走っているすごいCMも作られた。
大学の先輩のSさんが、社会人になって購入したのがこのFFジェミニだった。あちこちそれで連れて行ってもらった。カタログに書かれたデータでは特に秀でたところがある車種では無かったけれど、なんだかとても良い車だった。きっと車というのはそういうものなのだろう。
もうひとつ印象に深く残っているのはピアッツァのCMで、ドイツのイルムシャーがチューンしたピアッツァイルムシャーというバージョンが発売になったときのCM。モーツァルトの曲が流れる中、ピアッツァが草原のような森のようなところを走っている。画面はそれを空撮しているだけで、きっとヘリコプターで追いかけている。そして、T字路に差し掛かったあたりで「ダンケシェーン、イルムシャー」と声が入って、それで終わり。文字はもしかしたら日本語で画面に出ていたかもしれないけれど、セリフはドイツ語の「ダンケシェーン、イルムシャー」だけというシンプルさ。これで宣伝になるのだろうか、と心配してしまうほどのものだったのだが、一方ですっかりこのCMのカッコ良さに参ってしまっている自分もいた。
結局僕はお金も無かったこともあり、車ではなく中古の250ccのオートバイに乗ったので、車を買うのはずいぶん後になった。そして何年後かにいすゞ自動車は乗用車の生産をやめてしまった。