菜の花の河原

荒川や濁川などと合流して水量を増し、西南西へ流れる笛吹川。その両岸に、大量の菜の花が咲いている場所がある。この橋は豊富と玉穂を結ぶ豊積橋。
市民農園を借りていた頃のこと。僕は菜の花のまだ蕾の頃の穂先をおひたしにしたものや天ぷらにしたのが大好きで、それをたくさん食べたくてたくさん種を蒔いた。秋に蒔いて芽が出るが、やがて冬になるので育ちが遅くなる。早く食べたいな、と思いながら春を待つ。ようやく蕾が出ると少しだけ摘んで食べてみる。おひたしにして鰹節を振りかけ醤油をたらす。ビールを飲み、おひたしを口に運ぶ。「やっぱ季節のものは旨いねぇ」なんて言ってみる。
そして間もなく大豊作が訪れる。とても家族では食べきれないほどの菜の花天国だ。でも、大好きな天ぷらだって菜の花ばかり食べるわけにも行かない。子どもたちは竹輪の天ぷらなんかが好きだから、僕はなんとなく責任を感じて菜の花ばかり選んで食べてみる。
いくら好きだと言っても、何日も菜の花ばかり食べていれば飽きてしまう。そしてとうとう畑は黄色い花盛りになる。
そうなれば菜の花を抜いてしまわなければならない。花の咲いた菜の花の株を引っこ抜いて山にする。それを見て「もう食べられないんだな」と思うと、なぜか無性に食べたくなるもの。冷静に考えれば同じ時期に食べごろになるわけで、たくさん蒔いてもこうなることは予想できたはずだった。
欲張りな気持ちは冷静な判断を狂わせる。美味しいものを少し、これが良い。