カマキリの鎌

用意周到にこっそりと近寄り、よく研いだ鎌をそっと近づけ、ガブッっと捕まえる。つかまったら最後、どんなにもがいても決して鎌を緩めることなく、恐ろしい鎌に比べて意外に小さい口でバリバリと外骨格ごと食べつくす。最後は口で鎌を研いでおしまい。自分がコオロギやバッタだったとしたら、どれほど恐ろしいことだろうか。
まるで人間には関係ない虫の世界のことのようだが、案外、人間世界にもこのようなことが無いわけでもない。日々、こつこつ真面目に過ごしていても、それを鎌を研ぎながら見つめ狙うカマキリがいて、ある日突然ガブッとやられる。そのときの人間はコオロギと大差ない無力さだ。
ところで、暑さが続いていて嫌になる。虫の声はまだセミが全盛だ。今日も一日中ミンミンゼミの鳴き声が聞こえていた。これがコオロギに入れ替わるのはいつ頃だろうか。