ムクドリ

夏ほど激しくはないが、夕方になるとこのようにムクドリが集まってくる。葉の無いケヤキの枝先にたくさん止まっている様子を見ると、少し怖くなる。やっぱりヒッチコックの「鳥」のシーンを連想させるのだ。校庭のジャングルジムに止まる鳥が、カットが変わるたびに数を増やしていくシーンだとか、じわりじわりと怖がらせてくれたから、忘れられない。
やはり「鳥」は名作だったということか。それとも、それを子供の頃に見たので印象が強く残っているということなのだろうか。たぶん中学1年の頃だと思う。10チャンネルの日曜洋画劇場だった。淀川長治さんの名解説にも一層の力が入っていたように思う。この頃数年は特に映画に凝っていて、ほぼテレビばかりだったけれど、週に何本も見ていた。
当時の洋画は、映画館で見ると「字幕」で、テレビで見ると「吹き替え」だった。字幕の方が、俳優の生の声を聞けるとか、英語の勉強になるとか言う人もあったけれど、僕は俳優の生の声に興味は無いし、英語の勉強のために映画を見るわけでもないから、字幕がとても迷惑だった。映画館はお金を取る上に不便な思いをして字幕を読まなければならないので、タダで観られる上に吹き替えのおかげで画面に没頭できるテレビの映画の方が好みだった。もちろん、映画館で見ていたらお小遣いが追いつかないという切実な問題もあった。映画館も吹き替えにすればいいのに、と思っていたのだが、今頃ようやく吹き替え版が主流になった。今頃わかったか、と言ってしまいそうだが、きっと多くの人が同じことを思っていたのだろう。