ビル解体

甲府の街中でビルの解体風景を見かけた。雰囲気からすると昭和40年代ぐらいに建てられたものだろうか。年齢だけでいくと僕より年下かもしれない。
コンクリートの解体をする直前、もしも中を見ることができたら、面白いものが見られただろうか。たとえば屋根裏になってしまい完成後には見えなくなる場所に、こっそり名前が書かれていたかもしれない。コンクリートが乾く前に、床のどこかにクギで名前を書いた職人がいたかもしれない。古民家を解体するときに、大きな梁に墨で名前が書かれているのが見つけられることがある。大工さんが自分の作品に記したサインだ。画家が画の右下にサインを書くのと同じだ。とすれば、この建物を作った誰かが、建物のどこかにサインを残していても不思議ではない。
職人さんが彼女の名前と一緒に自分の名前を傘の下に並べて書いてあったかもしれないし、それをたまたまこの現場に解体職人として入っていた息子が発見するなんて面白い。
コンクリートの解体をしていたら、何十年前の建設時にうっかり生コンの中に落としてしまったある職人さんの結婚指輪が出てきた、なんていうのもドラマっぽくて悪くない。実際には軍手が出てくるぐらいがせいぜいだと思うが。あるいは、鉄筋の数が驚くほど少なかったなんていう手抜き工事が見つかるのもありそうなことだ。