チカラシバ

僕らは子供の頃に、エノコログサの房のことをネコジャラシと呼んでいた。全国的にそのように呼ぶのかはわからないのだが、さしずめチカラシバの房は巨大ネコジャラシだ。
妻はこれをムギと呼んでままごとごっこに使っていたという。道端で「十勝石みっけ!」と言って見つけた石を叩き割って包丁代わりにしていたそうだ。十勝石とは黒曜石のことであり、石器の高級な材料だ。それを叩き割って包丁代わりにしたと言うのでは、それこそ打製石器を作っていたということだ。ままごと遊びというよりは「縄文時代遊び」とでも名付けたくなる。プラスチックの安っぽいピンク色だのの包丁を使うよりは、透き通るような黒い黒曜石の石器を使ったままごとの方がとても贅沢な遊びに思えてくる。縄文時代の土器からはイヌビエなどの雑穀が見つかることがあるというが、もしかしたらチカラシバも食べていなかったとは言い切れない。