ヤツデ

ヤツデは、葉が落ちて明るくなった冬の森の中で、大きな葉をつけてよく目立っている。皆がいっせいに葉を茂らせ、より多くの日光を浴びるために周囲よりも少しでも高くなろうとしている森の中で、低い位置で葉を広げ、零れ落ちてくる薄暗い光を集めていた夏のヤツデ。それが冬には、夏ほど強くない日差しではあるがそれを独占し、誰もが種を散らし終えたような時期に花を満開にさせている。(この写真ではもう花は終わっているが)
人間に例えた場合、みんなが寄ってたかっているときは遠くでそれを眺め、みんなが飽きて去ってしまってからそこへ行ってそっと触ってみる子。ヤツデはそんな目立たないタイプの人だろう。でも、考えてみれば決して損な生き方ではない。むしろ群れた人よりも得をしているかもしれない。常に先頭グループで走るような人生の人が、何かのきっかけで振り返って後ろをじっくり見る機会があったとしたら、ヤツデのようなものをどう思うのだろう。