廃店舗

ハイテンポと書くと明るい感じだが、これは廃店舗、暗い感じだ。
甲府の街中にあるのだが、いつまでもこの状態が続いている。僕が甲府に引っ越してきた頃は、ここには古本屋さんがあった。古本屋さん以外の店舗はすでに閉められていた。全ての店が閉まってからもう10年以上経過している。今では倒壊の危険を知らせる貼り紙がされているほどだ。
もう四半世紀も前のこと、僕は北海道の地方都市で「シャッター街」と言われる景色を初めて目にした。一つ二つの町ではなく、多くの町がそうだった。特に中北部の町がひどかった。理由は炭鉱の閉鎖によるものなどだった。この季節であっても本来ならばよく賑わうはずの土曜日の夜、降り積もる雪とまばらな照明が寂しさを一層際立たせていた。ある町で飲んだ夜、誘われて行った2軒目の店は、何とも寂しいスナックだった。田舎の店によくある広いフロアにはずらっと椅子とテーブルが並んでいるのだが、カウンターに近いテーブルの部分だけしか照明が点いていないのだ。広いフロアの奥の方は完全に暗がりになっており、誰かがいても分からないほどだった。
当時は、シャッター街は廃坑などの特別な事情がそうさせるものだと暗に思っていた。だから、身近にそういうものがあって普通になるとは思ってもみなかった。それが今では、山梨県内でもあちこちに見られるし、県都甲府市でもいくつかのそんな商店街が見られる。シャッター街が県や国の衰退を表していると言えるものではないだろう。しかし、シャッター街という景色はなんとも強く斜陽感を漂わせる。