スイセン

何年か前、小学校だか中学校だか忘れたが、家庭科の教師がニラと間違えてスイセンの葉を摘んできて調理実習で使わせて中毒者を出したという事件があった。毎年この時期、咲き誇るスイセンの花を見るとこの事件を思い出す。子供は、たとえ先生のことは嫌いだったとしても、学校の先生がまさか間違いとは言え毒を盛ろうなどということは疑いもしないだろう。そして子供たちは、先生から出されたその素材を使って自分自身が食べるための毒入り料理を習った通りに作ってしまったのだ。男子の僕にとっても家庭科の調理実習は楽しいものだったし、自分たちが作った料理を自ら食べることは実物以上に美味しく感じられるものだった。そういうことを考えるほどに、この事件があまりにも悲劇的に思える。スイセンの花が群生している様子は、散歩中に目を引く美しいものであるが、そこからいつもこの事件を想像してしまうのは残念なことだ。