紅葉の山と穭の田

今日は休みだったので久しぶりに床屋へ行った。15時過ぎ頃だったのだが、立冬を過ぎた日差しは既に低いところから差しており、カーテンの無い待合に煌々と差し込んでいた。窓に背を向けた一列の長椅子には既に数人が座っており、その内の二人は柱の影に位置して日差しを避けていた。僕は仕方なく背中に日を浴びる形で座り、漫画を手にして待っていた。首筋に日が刺さるような感じになったので襟を立てた。しかし、頭にも日が差し、触ると後頭部が熱くなっているのがわかった。やがて一人が呼ばれた。その人は店の名前か何かが描かれた窓に貼られたものの薄い影に座っていたので、僕はそこへ移動した。柱の影に比べるとまだ日差しは差すが、素抜けのところよりは良かった。結局30分ほど待って僕が呼ばれた。刈られる人が座るエレベータ式の椅子が並んだ店の奥にも日が差していた。そのせいで妙にコントラストが付いていて、なんだかそれが1970年代頃の景色を思い出させた。そう言えばそのぐらいの頃は紫外線を殊更嫌う今の世相とは違って、日に当たるのはむしろ良い事とされており、そこら中に日差しが溢れていた気がする。今はどこも木々が伸び放題だし、カーテンも二重だったりで、影の部分が多い。椅子に座った僕には首にタオルが巻かれてマントが付けられた。そして髪に霧吹きがかけられている頃、ラジオから懐かしいイントロが聞こえてきた。イーグルスのホテルカリフォルニアだった。70年代の雰囲気はこれで更に高まった。僕の散髪が終わった頃には、更に店の奥まで日が差し込んでいた。