旅行中に紐を作った。今回は高速バスを使っての旅行だったのだが、その帰り道で使うためだった。
帰る前の日の夜、暇な時間ができた。その時に何となく帰りのことを考えてみたら、足りないものに気が付いてしまった。それが紐だった。まずは、鞄の中にひもが無いか探してみたが入っていなかった。そこで目についたのが、何枚かのレジ袋だった。ホテルのフロントへ行って少しの紐をもらうという手もあろうが、施しを得るのも良い気分では無いし時間もあったので、レジ袋で紐を作ろうという気分になった。
では、何故紐が必要になったのか。旅行の帰り道ではお土産の入った紙袋が二つ増えた。僕はこれで痛い目を見たことがあったのだ。バスに乗る人は皆同じ場所に来た人たちであり、そういう人たちが買うお土産も同じ銘柄になることが当然多くなる。そしてバスのトランクには同じ中身の同じ紙袋が何個もあって、取り違えてしまう事故が発生しがちなのだ。僕はこの轍を二度と踏みたくなかった。だから僕はこの事故から自分の荷物を守るために、ボストンバッグの吊手とお土産の紙袋の吊手を一つに纏めて縛る紐を必要としたのだ。
コンビニの小さなレジ袋が4枚ほどあった。これを割いて、1枚から4枚を作った。鋏が無かったので手で割いたのだがとても綺麗にはできなかった。此処から縄を作ろうとしたのだが、なかなか上手くよじれてくれないので三つ編みにしてみた。細いところと太いところがあるのは割いたときの不均一による。茶色い部分はお弁当などを買ったときの袋だ。
そして乗車の前、僕は3つの荷物の吊手をこの紐で一つに纏めてトランクに預けた。荷物の取り違えを心配することなく居られることに、心地良さというか誇らしさというか言いようのない気分があった。
実際のところは、降車場は新宿の1つだけであり、しかも僕は前から2列目の席だったので、降りてから直ちにトランクの前へ行くことができた。結果的に何も心配はいらなかったということになる。それでも、バスのトランクの扉が上に持ち上がり荷物の数々が見えた時、僕の荷物の吊手がしっかりと手作りひもで結ばれていたのを見たときは、少なからず達成感を得たのであった。