八丁堀2

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色々な食堂が並んで、通りにランチメニューの看板を出している路地があった。年季の入った感じの店構えのトンカツ屋があって、これに食指が動いたが、それを通り過ぎて歩いた。いくつか美味しそうな店があったが、やはりさっきのトンカツ屋にしようと戻った。すると、ちょうど七人のグループが入って行ったところだった。店に入ると、二人席に通されて「ご合席お願いするかもしれません」と、予め釘を刺された。先に入った七人組は僕の右斜め前に座ったのでその様子がよく見えた。店の注文取りは僕の方に先に来た。七人組は六十歳前後の男性ばかりで、白いシャツに黒っぽいズボンの見るからに勤め人の集団だった。そのうちの二人か三人が、あれが旨いこれが旨いと勧めていたので、きっと商談だか何だかで来た客を会社の近所にあるお勧めの店に案内したということなのだろう。僕は先にエビフライとカニコロッケの定食を注文していたのだが、七人組の多くはミックスフライ定食を注文していたので、お勧めを時間差で聞き逃してしまったかなと思った。やがて僕の注文が運ばれてきた。さすがはランチタイムで、思いの外早かった。チェーン店のフライのように分厚くトゲトゲにした衣ではなく、パン粉の細かい上品な揚げ具合に好感が持てた。タルタルソースもピクルスが入っているタイプではなかったので使うことが出来た。やがて七人組の席にも次々と料理が運ばれてきた。僕は漬物が嫌いなので、このおかずの量だとご飯に少し足りないと思い、料理を運んだ帰り道の店員さんに声をかけ、メニューにあった肉じゃがを追加注文した。すると、ランチではやっていないと言われた。そんなわけで後半は少々おかずとご飯の量のバランスが崩れてしまったが、美味しい昼食であった。食事を終えてホッとした頃、いよいよ本格的なランチタイムとなり次々と客が入ってきたので、僕はお茶を飲み干して店を出た。

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