紅葉と松茸

20241125211755 二週間前に単車でみずがき湖へ行った時のこと。ぐっと冷え込んで曇った日だったのにも係わらず、あまり着こまずに出たことを出発直後に少し後悔したが、引き返すのも面倒だしまあ大丈夫だろうと高をくくって走った。
 穂坂を過ぎ、明野から良い見晴らしの中を通る頃には、冷たい空気がチクチクと上着の布を通過して差し込んできた。そこから塩川沿いの道へ入り登りはじめると、根古屋、後藤田、大渡と集落が過ぎて行く毎に気温が下がっていくのが分かるようだった。
 比志の集落を過ぎた頃だっただろうか、道がカーブする左手に、縦1メートル横70センチといった感じの大きさの看板が無造作に置かれていた。看板は真っ白にペイントされていて、素人感たっぷりに赤いペイントで「松茸」と書かれていた。なんだろうか、と思っていると、二つ目ぐらいのカーブに再び同じ看板が置かれていた。このあたりの山ではきっと松茸が採れるんだなと思いつつ、炊き立ての松茸ご飯の姿と香りを思い出しながら先へ行くと、ちょっと広くなったところに軽トラが止まっていた。運転席にはおじいさんが座っていた。そして、荷台の横にやはり同じような看板が立て掛けられていた。なるほど、ここで売っているんだな、と分かった。農作業も落ち着いたこの時期、山へ入って松茸を採集する。それを土曜日や日曜日にこうやって紅葉狩りに来るような観光客に売って小金を稼いでいるのだろう。小金と言っても松茸と言えば一本数千円で売れるわけだから、なかなかの収入が期待される。でも、売れるのだろうか。この上流には増富温泉があるが観光地と言うほどのものでは無いので多くの人が通るわけでもないだろう。
 軽トラを通り過ぎ、みずがき湖へ行った。暫く散策したり写真を撮ったりし、帰路に就いた。すると、往路と同じようにカーブに松茸の看板が置かれていた。何時頃から準備していたのか分からないが、カーブのところで軽トラを止め、おじいさんが看板を置いている姿を想像してしまった。今度は往路よりも一枚多い三枚だった。そして、三枚目の看板を過ぎ、あの軽トラが居る手前のカーブを曲がると、なんと軽トラの横に一台の乗用車が止まっていて、老夫婦がおじいさんと荷台の商品を見ながら品定めをしている様子が見えた。ちゃんとお客さん来るんだ、そう思って何となく安心して道を急いだ。