夜明けのテレビアンテナ

今朝は4時半過ぎに目が覚めてしまった。もう眠くなかった。それで布団の中で閃いてしまった。ますます眠くなくなった。
「汚泥」というものがある。知らない人にとっては、泥というだけでも汚い感じの上に、更に汚いという字を重ねるから、さぞかし汚く感じることだろう。僕が汚泥のことを知ったのは、5年半前の2006年春のこと。プラネタリム番組の製作のために取材をしていたときだった。僕たちの生活から出た排水は、下水道を通って汚水処理場に行く。地図で笛吹川に沿ってみていると、例えば終末処理場とか浄化センターのような名前がつけられている。汚水をきれいにするためには、生物濾過という方法がとられている。早い話が、水の汚れ成分を大好物にしている微生物がたくさんいて、そいつらは次々と処理場に入ってくる大好物を食べまくり、どんどん増えてどんどん死んでいく。「汚水」は「汚」を食べられてきれいな「水」となって川へ流れていくという仕組みだ。一方、満腹し子孫を残して死んでいった微生物の屍は、槽の底に溜まってしまう。これを専門用語で「汚泥」と呼んでいるのだ。

前置きが長くなった。僕が夜明け前の布団の中で閃いてしまったのは、この汚泥の活用についてだった。以前、処理場では汚泥の処理に困っていると聞いた。肥料として使うにはとても良いらしい。生物の死骸なわけだから栄養はばっちりだ。処理場によっては、年に一度ぐらい施設公開日があって、そこでは肥料としての汚泥が配られたりするようだ。
そんなに栄養ばっちりならよく燃えるだろうな、と思った。きっとカロリーたっぷりだ。よく乾かすのが良いか、圧力をかけてブロック化するか、あるいはペレットか。石炭の粉を混ぜたら火力も強くて安定するかもしれない。ペレットならもしかして八ヶ岳で見た間伐材ペレットのストーブで使えるかもしれない。そうすれば普及が早そうだ。でも、もしかして燃えたときの臭いが悪いかもしれないな。燃やしたこと無いからわからないけど、生のときはちょっと臭いからな。
そのうち居ても立ってもいられなくなり、起き上がってパソコンの電源を入れた。ブラウザに「汚泥 燃料」なんていうキーワードを入れて検索してみると、、、あらあらいっぱい出てきた。同じこと考える人はいっぱいいる。この時点でかなり萎んだ。
よく考えれば当たり前のことだ。僕の浅知恵程度のことは、とっくに頭の良い人たちが考えて確かめているに決まっている。でも、見ているうちに面白くなってきた。これがうまくいけば、日本中の汚水処理場の槽から汚泥が消えてなくなる。肥料として分ける分など無くなるだろう。汚水処理場には必ず発電所が附属しているような日がくるかもしれない。これまで処理されていなかった汚水も処理されるようになり、処理の精度もより上がって、川もきれいになるだろうか。

いつの間にか外が明るくなっていた。朝焼けを見ようとカメラを持って外に出たら、とても寒く冷え込んでいた。テレビアンテナの向こうに少し赤さが残っていた。
テレビアンテナ、上のUHFは地デジ用に使えるらしいけど、下のVHFは無用になってしまった。日本中で無用になってしまったVHFアンテナが何千万本とあるのだろう。今度はこれの使い道は無いかなどと考え始めてしまった。

そんなわけでもう眠い。