スピーカーユニット

職場の上司にIさんというオーディオマニアがいる。ちゃんと自宅にリスニングルームも構えている。LPレコードが数百枚、CDもそれ以上にあるらしい。僕はまだIさん自慢のリスニングルームを訪れてはいないのだが、職場の昼休みに話を聞いているだけで随分感化されてしまったようだ。
僕も小学生の頃にはラジカセに凝った。あちこちの電気屋さんでカタログを集めて研究したり実機を触ったり聞いたりで吟味し、これだと思った機種を父親に進言した。でも楽しみに待っていた僕に、父親はまるで違う機種を買って来てしまった。理由は「安い」から。僕は、ようやくラジカセが手に入った喜びと、これで目当ての機種は手に入らなくなったという落胆が混ざり合う複雑な気持ちに陥ったものだ。中学生になると、オーディオのカタログも随分たくさん集めて詳しくなった。Iさんの話はその頃の懐かしい単語がたくさん出てきて、僕が当時、学校の勉強そっちのけで覚えたことを次々と思い出させてくれた。
しかし今、オーディオにお金をつぎ込むことは出来ない。でもちょっと遊んでみたい。それで思いついたのがスピーカーの自作だった。ネットで調べてみると、自作スピーカーの世界は実に奥が深い。楽しめそうだ。

そして思い出したのが、このずっと以前に使っていたテレビから取り出したスピーカーユニットだった。画面は大きいが音声はモノラルのテレビだったので、スピーカーは8Ω1.5Wという定格の1個だけ。アンプに繋げて聞いていたので、それでも不満は無かった。外してから何年も埃だらけになっていたので汚らしいが、これを使って何か作ってみようかと思案を始めた。