風船

置き薬の薬屋さんが来ると、風船をいくつも置いていく。小2の次女はそれが楽しみなのだが、中3の長女も風船で遊んで楽しそうにしていた。あー、受験なのに。
置き薬と言えば、僕が子どもの頃は紙風船だったなあ。まあ、男の子だし、弟と一日遊べばおしまいというもの。だんだん叩く力が強くなって、やがて全部割ってしまうのだ。
置き薬の薬屋さんと言えば、富山の薬売りだが、僕がまだ20代前半の頃に北海道の道南のある町で富山の薬売りと接する機会があった。
それは僕が仕事の関係で頻繁に訪れていた町の民宿でのこと。冬の頃、僕らは工事関係者で、年度内に完成する工事に従事していた。もっとも僕は営業だったので、たまに来ては現場の手伝いをするぐらいのものだった。そして現場に長く詰めている先輩の技術者をねぎらったりしつつ、民宿の夕飯で酒を飲んだりする。そこで気付いた。
時々来る僕が気付いたのは、一人の客がいつも同じ人であること、そしてその人は食後になると、宿のおかみさんが居なくなっていても、当然のようにキッチンに入り込んで冷蔵庫を開け、大きな焼酎のペットボトルと氷を取り出して飲み始めることだった。僕らはビール1本やお銚子1本毎にそこそこの金額を取られ、いい塩梅に酔っ払うとそれなりの料金になる。でもその人はどうやらマイボトルだし氷は使い放題だ。つまり、宿にとって信頼の置ける親しい常連客だったのだ。そして、どんなきっかけだったのか忘れたが、僕らはその人のその焼酎で乾杯し、その人のいろいろな話を聞くことになった。話を聞いて知ったのは、その人が富山の薬売りだったことだ。