高圧電線の鉄塔

・ファミレスやスーパーなどが並ぶバイパス沿いに発達した、或る郊外の町。バイパスの裏手には住宅地が続き、その先には農村と新興住宅地が交じり合う地帯があり、やがて田舎の景色に移り変わる。毎日変わらない景色の平穏な生活の中にも、人々はなんとなく覆いかぶさってくる不安を感じながら日々暮らしていた。
・ある日のこと、そんな平穏な景色を打ち破って、森の向こうに巨身が現れた。それは巨人(何かの生物)であるのか、機械であるのか、あるいは未知の何かであるのか、誰もわからなかった。人々は驚き、恐れた。訳知りそうに話す専門家を気取る人々が、それぞれに勝手な解釈を語った。
・巨身は動いた。人々は踏み潰されないようその行方を予想しながら避難した。幸い負傷者は無かった。それでも、ところどころで畑が踏み潰され、いくつかの小屋が壊された。その中にはたまたまある種の猛獣を飼っていた檻もあり、そこから逃げ出した猛獣に噛まれて大怪我をしたという二次災害が発生した。
・そして人々は再び驚いた。巨身の行き先に立ち塞がるように、別の巨身が現れたのだ。巨身の動きは止まり、まるで睨み合いのようになった。人々はまたもいろいろな想像を言い合った。中には、あの巨身らは恋人同士ではないかというようなものまであった。