セイタカアワダチソウとススキ

あのセイタカアワダチソウが、今では可愛いもんだ。
前にもこのことは書いたかもしれないが、もう一度。僕が子供の頃、セイタカアワダチソウがどんどん増えてきてススキ野原を覆ってしまった。ススキは葉に触れると傷になるのでそれはそれでいやだったが、冬になるとすっかり枯れて遊び場になるので楽しかった。セイタカアワダチソウも葉をむしると長い1本棒になるので、遊びにはいろいろ使えた。髄の部分が柔らかくてそれを取り出して遊びの道具にしたこともあった。しかしそのうちセイタカアワダチソウは巨大になってしまい、子供の手に負えない強い草になった。
しかし、僕が小学校高学年の頃に絶頂を誇ったセイタカアワダチソウは、やがて少しずつ勢力を後退させて行った。高校の頃にサイエンスという雑誌(今の日経サイエンス)で知ったのは、セイタカアワダチソウクルミの木などのように根っこから毒素(アレロパシー)を出して他の植物が育ちにくい環境を作り出して自分たちだけのコロニーを広げているということを知った。そしてその毒素で自家中毒を起こすような格好で勢力が減退したということだった。
その後、野原にはススキが戻ってきた。セイタカアワダチソウが自分すらも侵すほどに撒き散らした毒素が、年を経て中和されたからだろう。そして今ではこの写真のように毒素で追い立てられたススキが茂る野原で、かつて毒素という武器を振り回して我が物顔で威張りまくったセイタカアワダチソウが、ススキの穂の下に往時の三分の一ほどの背の高さになって共存している。平家物語を思い出させる。