プラム

南アルプス市の道端に半ば野生化しているプラムを見かけた。耕作放棄された果樹園なのだろう。農家の高齢化が進んでいる今日において、こういう場所は増えているのかもしれない。下草は伸び放題、枝ぶりも良くない。
僕はちょっと戻って車を止め、その様子を写真に撮っていた。すると、後から来た車がスピードを緩めて横を通り過ぎた。中に乗っていたのは70歳ぐらいの老人で、何か非常に怪しいものを見るような目つきで僕を見ていたのが気味が悪かった。僕の方は何枚かの写真を撮り終わりその場所を離れた。すると、かなりノロノロ運転だったその老人の車は道端に停車し、老人は車を降りて30メートルほど離れたプラムの木の方に向かって歩いた。目つきは相変わらずで、僕の方を気にしながら時折プラムにも目をやっていた。僕は車に乗ったが、それを見て安心したのか、老人はプラムの木が生えている草むらに入って行った。僕は、「ははぁ、この老人はプラムを採りに来たのだな、でもそこに写真を撮っている変な奴がいたので睨んでいたのだな」と確信した。すると、僕はちょっといたずらをしたくなった。そして、その老人のそばでわざと車のスピードを緩めて先ほどの老人がやったようにゆっくりと通り過ぎてみた。老人は枝に伸ばした手を引っ込めて、こちらを得意の気味悪い目つきで睨んでいた。姑息という言葉が思い浮かんだ。