ヤブカンゾウ

荒川の土手にヤブカンゾウが固まって咲いている場所がある。他の場所には見られないので、どうしてかなと思ったら、園芸種出身で結実しないのだそうだ。増えるためには根っこを伸ばしていくか、洪水を待つか、になるという。
この梅雨時には西日本で大雨が降り、洪水による大きな被害が出た。昨年の夏は土砂崩れによる堰止湖(土砂ダムと呼ばれていた)ができてしまい、決壊が心配された。私たち人間にとって、洪水は「被害」だ。しかし、ヤブカンゾウにとっては繁殖の「チャンス」となる。一方、洪水が人間にとって被害でなかったこともある。紀元前のエジプトでは、洪水が運んでくる肥沃な土が実りをもたらすとしてその時期を占ったという。洪水以外の災害が植物にとって繁殖の機会になることもある。オーストラリアには、山火事が無いと実がはじけないという植物がある。繁殖には100年に1度程度の確率で訪れる山火事を待つというのだ。
自分自身はそんな千載一遇のチャンスみたいなものに賭ける気にはならない。でも、チャンスのその瞬間に、それが自分自身にとっての千載一遇のチャンスだとは判らないものだ。だから何年も後になって、思えばあの時の判断が間違っていたのかな、と後悔するわけだ。