雪の山登り

雪山を登っているのではなく、雪の日に山を登っているという微妙な意味の違い。
今日は歩いて通勤することにした。積雪が残る休日で交通量の少ない国道から仰ぎ見た職場は少し煙っていた。

昨日の午後から降り始めた雪は、翌日の午前中まで降り続くという予報を外し、夜には止んでくれた。車で行っても良かったのだが、雪が降ると何となくささやかなアルペン気分を味わいたい気持ちになり、帽子をかぶりバッグをたすきにかけて歩き始めた。
トンネルに差し掛かる手前、いよいよこれから登る階段が見えてきた。実際にはアルペンとはほど遠い住宅地に作られた階段を登っていく道なのだ。

それでも、誰の足跡も付いていない道もある。雪に埋もれた角が取れてしまった階段には、草や木が芽を出して20センチぐらいに育っている。普段もあまり人が通らないのだろう。そんな場所に最初の足跡を付けながら登っていく。

ときには、雪の重さに耐えかねた竹が道に覆いかぶさっているような場所もある。頭の上の電線から雪や雫が落ちても来る。そのために帽子をかぶってきた。たまに帽子に落ちるものの振動を感じながら更に登る。

身体が大分温まったころ、古い水道設備が見える場所に来た。ここからは雑木林の中を登る道になる。それまでよりも急坂なのでたちまち体が熱くなり汗ばんでくる。上着の前のチャックを開いた。それでも熱い。

右側が開けた。元々ブドウ畑だった場所だ。雲が切れて青空が見えている。日も差してきた。あと少しで職場に着く。