ジョブズ死去

19時過ぎ、家に帰ってきたら、夕刊の見出しに「ジョブズ死去」とあった。我が家の"Macintosh"は物に埋もれてしまっている。上は"iMac"、ジョブズAPPLEに復帰してから出た記念碑的な機種だ。2枚目は"G4-MDD"という機種で、OS9OSXデュアルブート機だ。どっちも我が家の家族のために良く働いた。ジョブズ死去のニュースに触れた今、使っているのがWindows機だということが口惜しい。

1980年代の終わりごろ、MS-DOSの本を買ってせっせとコマンドを覚えていた。そのとおりに動くのは楽しかったけれど、覚えるのは正直なところ苦痛だった。電源入れると、ピボッって音がしてヒューンと冷却ファンが周りだす。画面にはメモリが640kbだの何だのと文字がズラズラ出てきて、コマンドプロンプトっていうのが出てきて終わる。「あとはお前がなんとかしろ」と言われているようで嫌だった。MIFESというのをよく使ってたけど、確か1文字ずつのコピーや切り取りができなくって、1行単位でやらなきゃいけないから不便だった。やがてVJE-Penなんていうワープロが出てちょっと使った。Microsoft Worksというのも出て、まあまあ便利にはなった。でも、仕方なく使っていた。
ある日の夜、当時勤めていた会社でのこと。1階のオフィスにいる僕は、用事があって3階の部署にいった。すると、机の上に小さなクリーム色の画面を載せてキーボードをカタカタやっている先輩がいた。ちょっと見に行ったら、それが"Macintosh"だった。機種は"SE"だったと思う。モノクロの画面だったが、カラー画面のMS-DOSマシンよりもずっとビジュアルが良かった。その画面の下に横縞があってその縞にまぎれてフロッピーディスクの入り口があった。画面にも驚いたが、フロッピーディスクを取り出すためのボタンもレバーも無いのにもっと驚いた。当時のMS-DOSマシンでは3.5インチのフロッピーディスクドライブではボタン、5インチではレバー、8インチではクリップの持ち手みたいなものがあって、それでディスクを取り出していた。
先輩に「どうやってフロッピーを出すんですか」と聞くと、先輩は得意になってマウスを握り、フロッピーディスクの絵のところにポインターを持って行き、そこでその絵をくっつけてゴミ箱の絵まで持って行き、捨てた。すると、カシャっと音がしてディスクが飛び出した。先輩はゴミ箱について語った。そしてテスト用に作ったファイルをゴミ箱に捨てた。ゴミ箱の絵が膨らんだ。も〜驚いたのなんの。MS-DOSでは"del"というコマンドを使って、ファイルのあるディレクトリとファイル名を1文字も間違えずに打ち込んでリターンキー。でも消えたかどうかすぐにはわからない。だから確認のために必ず"dir"というコマンドでディレクトリの中身を確認しなければならなかった。「元に戻すのも簡単だよ」と行った先輩は、ゴミ箱を開いて見せ、その中にあったさっきのファイルを再びデスクトップに戻した。MS-DOSでは、一度捨てたファイルを復活させるのはかなりの業師でなければできないことで、僕には無理だった。
僕はもうMacintoshのとりこになった。それからは時間があると先輩のところへ行った。Macintoshは高いので買えなかったけれど、雑誌なら買える。それで雑誌をときどき読んでいたら、ジョブズのことについて書かれた記事も多かった。でも、当時はAPPLEに彼はいなかった。

明日は早起き、おやすみなさい。