集会所の屋上

雨水を抜くためのパイプがどこかで詰まっているのだろう。雨が降ると団地の集会所の屋上は水溜りになってしまう。風が吹いて運んでくる土や砂がそこに付着し堆積する。いつの間にか草が生える条件が揃ったのだろう、随分生えてしまった。屋根に草が生えている景色というと、古びた茅葺屋根の家を想像するが、コンクリート製の建物の屋根でもこのようになる。屋上には、公園で遊んでいた子供が蹴り上げてしまったり打ち上げてしまったと思われるサッカーボールや野球のボールが乗っている。たまにそれらが無くなっていることがあるところを見ると、誰かが登って取ってくるのだろう。でも、草刈まではしないだろうから、草はすくすくと伸びる。
ここ数年、再生可能エネルギーなる言葉が流行り、太陽光発電(僕たち宇宙好きにとってあの青色の発電パネルは、太陽光発電という言葉よりも太陽電池パネルと言われるほうがピンと来る)が人気を集めている。それがあちこちの家の屋根に取り付けられるようになって久しい。原発事故があって以来、とくに増えたような気がする。作った電力を高値で買い取ってくれるという制度が出来たことが後押ししているところもあるだろう。
十年以上前ぐらいまでは、太陽エネルギーの利用というと、ソーラーシステムという言葉が流行っていた。これは太陽熱を利用するものだったが、やはり屋根に取り付けられるという点では同じだった。僕が子どもの頃にも、屋根に取り付けた装置に水を回してお風呂を沸かすという、太陽熱利用の製品を取り付けている家があった。屋根に降り注ぐ太陽のエネルギーは、いろいろと魅力を感じさせるのだろうか。
ソーラーシステムと太陽光発電の流行の合間にも屋上は注目されていた。ヒートアイランドとか、地球温暖化とか、CO2削減といった言葉が流行り、それらのために屋上緑化ということがあちこちで行われた。個人宅で行われることは少なかったかもしれないが、ビルの屋上ではせっせと実施されていた。
集会所の屋上にソーラーシステムや太陽光発電が設置されたことは無いようだが、まるで自然に雑草が生えてしまい、結果的に少しだけ緑化がされている。少しはCO2削減に貢献し、ヒートアイランドを緩和しているといえるだろうか。流行り廃りの極端なこの世相の中では、もはや時代遅れとされそうだが。