キボシカミキリ

10日ほど前、アパートの階段にキボシカミキリがいた。触角を除く体長が2cmぐらいの大きさの、小さめのカミキリムシだ。形は良い。体調程の長さの太い触角があり、顔は怖い。日本のカミキリムシで最大級のシロスジカミキリを小さくしたような姿だ。
子供の頃、シロスジカミキリを捕まえた機会は多かった。指先を噛まれて血がボタボタ出たこともあった。硬いクリの木の材をガリガリ削って穴を開けて棲んでいるぐらいだから、ふにゃふにゃな人間の指などわけなく切れる。シロスジカミキリは首のあたりを掴んだときに、肩と首に指の肉が挟まれることもある。これも痛い。カブトムシやクワガタの何処と無く間の抜けた平和的な感じの顔つきに対して、シロスジカミキリの顔は実に精悍で怖いほどだ。仮面ライダーに出てくる怪人やウルトラマンに出てくる怪獣に通じるものがあり、その顔を一方的に等身大や40mに拡大した様子を想像して恐ろしい気分になってみたりしていた。いわゆる悪役顔なのだ。だから、体が大きい割りにカブトムシやクワガタのような人気昆虫ではなかった。
キボシカミキリは僕にとって珍しかった。覚えている中で2回しか見たことが無い。初めて見たのは友達の家の庭で遊んでいたときだったが、まるでシロスジカミキリのミニチュアのようなその姿に感動した。キューキューという音もシロスジカミキリのそれとよく似ていた。友達の家にあった図鑑では見つけることが出来ず、家に帰って図鑑を見てキボシカミキリにたどり着いた。羽に艶の無いシロスジカミキリに比べると、キボシカミキリの方がむしろ綺麗で好きになった。
そしてそれからずっと忘れていた。ずいぶん久しぶりの再開であった。