雪雀

朝起きたら、外から聞こえてくる自動車の走る音がいつもと違っていた。先に起き上がった妻がカーテンを開けて「あっ」と声を出した。「どんな感じ?」「積もってる」起き上がって外を見ると、すっかり雪景色だった。今日は仕事が休み、こんな天気の日に休みなのはラッキーだ。時間が経つに連れて前の道が渋滞し始めた。いつもより早い時間だ。今日出勤だったらいつもより早く出なけりゃいけなかったな、と思いながらラッキーを喜ぶ。少々趣味が悪い感じもするが、人が幸福を感じるのは他人と自分の境遇を比べてであることは案外普通のことだろう。
子どもたちを学校へ追い出し、ホッとしてお茶の時間を過ごしていたら、長女から電話が来た。大事なものを忘れたから学校に届けてくれということ。なんでこんな雪の日に、しかもせっかくの休みに、と思ったが行ってやることにした。ラッキーを喜んだのは結局つかの間のことだった。
せっかくの雪の日の外出なので、カメラを持って徒歩で出かけた。荒川の河川敷は4cmぐらいの雪が積もり、僕が歩いた10時頃には、もうすでに中学生たちが登校のときに付けたはずの足跡が消されていた。雪はだんだん小降りになっていった。中学校へ忘れ物を届け、帰り道は写真を撮りながら寄り道しつつのんびり歩いた。学校から土手に上がる道に雀がたくさんいた。近づくと飛び立ちほんのわずか向こうに降りる。また近づくとそれを繰り返す。ずっと遠くへ行ってしまうのではなく、僕との追いかけっこをしているようにちょっとだけ遠くに飛んで、まるで知らん顔をしている風だ。なんだか楽しそうに見えた。