市役所建設現場

ぶっといH鋼が組まれ、甲府市役所の棟がずいぶん上がってきた。暑い日が続くので、工事は大変なことだろうと思う。一番上のクレーンにいるオペレーターさんは熱射病にならないかと心配だ。鉄骨も直射日光を浴びて暑くなっていることだろう。以前、日光に炙られた鉄板で卵を焼いて見せた実験をテレビで見たことがある。体感温度は半端ではないはずだ。
もう二十何年も前のことだが、真夏の工事現場で一週間ほどだっただろうか、工事の立会いをしたことがある。プラネタリウムのスクリーンを貼る工事だ。室内だったので直射日光からは逃れられたのだが、コンクリートの建物で、プラネタリウムだけに窓の無い部屋なので、サウナのような暑さの中での工事だった。窓が無いから仮設の照明も設定されており、それがまた高熱を発する。工事現場内は、長袖・長ズボン・安全靴・ヘルメット着用で、しかも高所作業なので安全帯も着けている。僕は立場上、居るだけで良いのだが、居るだけで汗が流れるように出てくる。作業をしている職人さんは更に辛かったことだろう。現場には家庭用よりも大きくて強力な扇風機もあるのだが、これがあるからと言って快適になるわけでもない。現場内にはグラスウールが浮遊していたり、ハツったコンクリートの粉があったりで、そういうものを扇風機で吹きかけているようなものだ。
そのときは職人さんたちと同じ職人宿に泊っていたのだが、作業終了後にはお風呂が絶対必要で、いつもより入念に洗う。ビールがたまらなく美味しくて、職人さんたちにすすめられるままにビールも日本酒もグビグビと飲んでいた。それでも不思議と翌日には残らない。夏の工事は何度か経験があるのだが、この工事が一番印象に残っている。
当時「夏に貼ったスクリーンは出来が良い」と何人かの先輩社員から聞いたことがあった。きっと暑さで材料が伸びているからだろうと思う。このプラネタリウムが出来てからも訪れたことがあるのだが、僕はプラネタリウムの内容よりもスクリーンの出来の良さに悦に入り、そこに夏の作業の思い出を投影していた。