ストーブのお手入れ

我が家で使っているストーブは、こんなレトロな石油ストーブだ。と言っても、アンティークではなく2004年に購入したものだ。新しいといってもこの冬で10年になる。この冬は何も手入れをしないで使い始めたのが悪かったのか、燃え方にムラがあった。火を小さくすると不完全な燃え方になるのか、悪い臭いが出ていた。手入れをしなきゃ、と思いながらも冷え込んだ日が続いたりして先送りになり、その後は風邪を引いてしまったので、手入れが今頃になってしまった。
このストーブの良さは分解が簡単なことで、かしめたような造りのところはほとんど無く、ネジも含めて分解すべきところは工具無しで手だけで分解が可能だ。というわけで、上から順に取り外し、ガラスのほやの磨き担当は妻に任せ、芯を取り外すところまで分解した。芯のてっぺんにはタールが固まったような物がこびりついていたので、指でつまんでゴシゴシとしごき落としてみた。すると、中から綺麗な芯の先端が現れた。芯の長さは揃っていたので悪い燃え方の原因はやはりこの黒い塊だろう。今度は組み上げていけば良いのだが、せっかくなので灯油を使いながらボディを使い古しの歯ブラシで磨いてみた。汚れでくすんでいたボディが光り始めた。全てを磨き組み上げた。今、綺麗に燃えている。火を小さくしても臭くない。灯油も節約できそうだ。
遡ること四半世紀、僕は職場の上司にストーブをもらった。それはそのMさんがやはり若い頃から使っていたという白い「アラジン」だった。これは本当に古くて、地震で消える装置がまだ付いてない時代のものだ。下敷きの円盤には「ヤナセ」のシールが貼られていて、輸入元であることが記されていた。ヤナセは車だけでなく、古くはアラジンも輸入していたのだとこのストーブで知った。
結婚し、子供が産まれて、東京から甲府へ引越し。子供が危険かも、ということもあって引越しを機会に十年近く使ったアラジンと泣く泣くお別れした。Mさん、せっかく頂いたのにすみません。それからしばらくはパネルヒーターを使っていたのだが、電気代の高さと収入が見合わずにお蔵入りになった。甲府の寒さもあった。そして石油ファンヒーターを買ってみた。最初はなかなか良いと思ったが、なんとすぐに壊れてしまった。ひと月も使っていなかったから保障期間内ということで交換してもらえたが、翌年また壊れてしまった。このときは保障期間を過ぎていたので分解してみたら、単純なつくりだったのですぐに直せた。でも、また同じ症状で壊れたのでもう直す気がしなかった。安い製品だから仕方ないかもしれないが、造りも安っぽかった。それから再びパネルヒーターを数年使ったのだが、やはり寒いということで買ったのがこの「フリージア」というストーブだった。
フリージアを買う前に真っ先に頭に浮かんだのがアラジンだった。あのときにアラジンを捨ててしまったのをとても後悔した。アラジンは今でも店に並んでいる。でも、自動消火装置が付いたりガードが付いたりして昔のものに比べて醜くなってしまった。しかも人気商品だから値段だけは高い。そして辿り着いたのが「日本船燈」のフリージアだった。ランプを作っているメーカーだ。フリージアはランプのように全体が真鍮で造られている。そしてランプのように明るいのだ。アラジンの場合は、雲母の窓から火を覗くという感じだが、フリージアはガラスのホヤに囲まれた火が周囲を照らす。そして点火したとき、少しずつ大きくなっていく炎をじっと見つめる満足を得られる。これは石油ファンヒーターには無い贅沢だ。アラジンの青い炎と対照的にフリージアは橙色の炎が燃える。
この製品は現在でも変わらず販売されている。そして、ほとんどの部品が単独で購入できる。日本製品の本来の良心を感じることが出来る。