放置された何かの機械

近所の空き地に、エンジンのような物が置かれていた。何だろう。実は値打ち物だったりして。
最近はあまり見られなくなったが、20年前ぐらいには、空き地や畑の隅っこに古い車が置き去りにされているのがよく見られたものだった。中には、今では名車として扱われるようなものも見たことがあった。
そんな中で僕がよく覚えているのは、山梨県で見た車だ。当時は大学生になったばかりの頃で、山梨県には河岸段丘や渓谷の地形観察のために来たのだった。車は、昇仙峡を観察したときに見たものだった。ただし、昇仙峡のどこかで見たのか昇仙峡に近いどこかで見たのかは覚えていない。車種は「ダイハツ ミゼット」だった。子供の頃にはまだまだ現役で走っていたもので、3輪の奇妙さと間延びした蛙の顔のようなフロントの意匠が「かっこ悪い」と思わせてくれた。僕が山梨で見たミゼットは、蛙顔のモデルよりも更に前のモデルのようだ。僕が驚いたのは、その車にはまるで自転車のようなハンドルが付いていたことだった。自動車といえば丸いハンドルが当たり前と思っていたので、横長の棒のハンドルが付いている姿は異様に感じた。まだ知り合って浅い自動車に詳しい友人が、その車はミゼットだと教えてくれたのだった。
空き地や畑の隅に置かれて風雨に晒されている車はよく見たものだが、どういうわけか具体的なところをあまり覚えていない。でも、このダイハツミゼットだけはちゃんと覚えている。ただし、記憶があいまいなのは、そのミゼットがすでに放置されたものだったのか、それとも現役で使われているナンバー付きのものだったのかを失念していることだ。