草餅

奈良の旅館に泊まって美味しい夕食を食べてから部屋でテレビを見ながら寛いでいたら、なんとも皮肉なことに「奈良に旨い物無し」みたいなテーマの番組をやっていた。内容としては、奈良には世界遺産を含む国際的にも有名な観光資源がどっさり有るにも拘らず、名物と言われるような食べ物が無いという。それで地元の人たちは名物の創出のためにいろいろと知恵や汗を絞っているというものだった。なるほど、言われてみると「柿」ぐらいしか思い当たらない。
さて、これから家に帰るという時、僕らは長谷寺の参道にいた。柿のお菓子がいろいろとあって、その中から選んで職場へのお土産した。自分たちで食べるためには草餅を買った。参道には何軒かの草餅屋があって、製造販売の看板を掲げていた。写真は草餅の餅に練り込むヨモギ。僕らが食べ慣れたた草餅は、緑色に染まった餅に粒々の草の断片が入っている感じだ。しかし、奈良の草餅は、餅がもっとずっと濃い緑色になっており、草もより細かくて粒々感が無い。そして、しっかりと青臭さがある。これが中の餡子と美味しい渋茶とよく合う。
「草餅」はどこにでもあるものであるが、奈良の草餅はどこにでもある草餅とは違う「丁寧な草餅」であると感じた。「蜜柑とお茶」のオレンジ色と緑色のコンビが東海道線の車両の色になっていると読んだことがあった。同じ色のコンビで「柿と草餅」が僕にとっての奈良の名物になった。