スクーターと瓶

スクーターに人の代わりに瓶が乗っていた。
昼間は強く降っていた雨だったが、夕方になって止んだので、雨上がりの景色を見に散歩に出てみた。こんな写真を撮りながらほんの15分も歩いたあたりでぽつぽつと雨が降り出した。僕は慌ててウインドブレーカーのファスナを閉めカメラをお腹のところで覆い、襟からフードを取り出して被った。そして家へ向かって早足で歩いた。しかし、雨脚の方もだんだん強くなってきた。だいぶん年季の入ったウインドブレーカーの布地は、購入した頃のように水をはじくことは無く、乾いた土のように雨を吸い込んでいき、その分色が濃くなった。やがて肩のあたりが冷たくなってきた。中に着ている服にも滲みてきたのだろう。短く不運な散歩を終えて家につきウインドブレーカーを脱ぐと、フードのところだけがしっかりと雨をはじいていたことが分かった。襟の中で何年も能力を温存していたのだろう。