枯れススキと高圧電線

あの歌のせいか「枯れススキ」と言えば貧乏の象徴という感じがある。そしてその向こうには、栄華を誇った電力会社の象徴たる高塔「高圧電線の鉄塔」が見えている。ミレーの名画「落穂拾い」は、収穫を終えた畑で落穂を探して拾う貧乏人の姿と、遠くで大規模に収穫作業をしている農場主の様子が対比されている。
僕が中学生の頃、日本は「一億総中流」と言われていた。アンケート調査で、自分は貧乏だと思うか裕福だと思うか、という意味の設問に対して、普通、と答える人が大多数だったそうだ。僕も子どもながらに、いろいろあるけどまあ普通かな、と思っていたし、友達の家に遊びに行っても、ちょっと裕福やちょっと貧し気味を感じる程度で大した違いは無かった。
その頃の所得税最高税率が70%で、消費税なんてものは無かった(地方消費税というのはあった)。たっぷりと所得がある人はたくさんの税金を払い、再配分される。そんな感じだった。ただ、政府が社会資本整備など様々な形で再配分する中で、政治家が汚職して稼いだというニュースは多かった気もする。金持ち政治家がたくさん税金を取られるのが悔しくてというわけでもないだろうが、汚職でこっそりもらう賄賂は所得税の対象にならないからその方が実入りがぐっと良かったことだろう。
ちょっと話がそれたが、70%だった所得税最高税率は40%にまでお得になった。一方、消費税が導入され、誰でも買い物をすれば5%余分に金が出て行く。この消費税率を10%に上げることをお上は検討しているらしい。貧乏人の所得はほとんどが消費に消えてしまうわけだから、消費税10%というのは所得税が10%上がるのに等しい。でもお金持ちは30年前に比べて所得税率が30%も下がっているのだから、差し引きで20%得だ。しかも、所得の全てを消費に使うわけではないのだからもっとずっと儲かる。
貧乏人は益々高くなる鉄塔(富裕層)を見上げるしか無いか。