イチゴ

一年で一番寒い頃から始まる甲府のイチゴ狩り。イチゴ狩りが始まると、やがてイチゴの直売所もオープンする。写真の直売所は小瀬スポーツ公園のちょっと北に2軒並んであるもので、写真の正面にスポーツ公園がある。このあたりからスポーツ公園を挟んで南にはイチゴのビニールハウスが点在する。もっとも盛んなのが小曲町という地区で、各ハウスにはイチゴ園の名前とともに番号も書かれている。組合で付けた番号なのだろう。
直売所を通り過ぎるとき、少しだけ歩く早さが遅くなった。妻は「去年より高め」と言って少し残念そうな顔をしていた。1パック500円以上していた。そう言えば、しばらく前のローカルテレビのニュースでは、重油代が高騰したた上に今年の冬はとても寒いので、ビニールハウスの暖房費がいつもよりずっと多くかかっていると知らせていた。
何年か前に、家族でイチゴ狩りに行ったことがある。僕も妻も美味しくてたくさん食べたのだが、小学校低学年だった長女は大好きなはずのイチゴの食が進まない。どうしてかと聞いてみたら「ぬるい」と言った。数少ないボキャブラリーの中から最も適切と思われる言葉を選んでの感想だったのだろう。
なるほど、冷蔵庫に入れてあった冷たいイチゴしか食べたことが無かったかもしれない。確かに、言われてみれば冷たい方が美味しい。大人は、採れたて=新鮮、新鮮=おいしい、っていうようなステレオタイプを妄信しているのかもしれない。考えてみれば、例えばスイカはしっかり冷やして食べるものだ。キャンプのときなど、冷たい沢の水で冷やしたスイカは美味しい。一方、海水浴場の直射日光で炙られた後にスイカ割りして食べたスイカは美味しくない。子どもの頃、誰かがスイカを買ってくると、沸かす前の風呂に水を張ってスイカを浮かべていた。当時の冷蔵庫はどこの家も小さかったからスイカを冷やすのが大変だった、、、。イチゴの話がスイカの話になってしまったが、冷やして食べると美味しいのはどちらもいっしょだ。
子どもの頃に代表的だったイチゴの品種は「ダナー」というやつ。母親の買い物に付いて行ったとき、酸っぱい細長い方のイチゴパックをつかもうとする母親に対して「ダナーがいい!」と言っていたのを覚えている。子どもは美味しさのためにはイチゴの品種名まで覚えてしまうのだ。まんまと目的のものを手に入れ、そして家に帰るとダナーは冷蔵庫に入る。夕食後、ダナーは水で洗われヘタを取られて小鉢に入れられ食卓へ出される。小鉢には当然のように牛乳と砂糖が入れられる。これがイチゴの普通の食べ方だった。子どもたちにとって更に贅沢だったのは、牛乳と砂糖ではなくてコンデンスミルクをイチゴにかけてもらうこと。こんなときは小鉢に残ったコンデンスミルクも綺麗に舐め切る。
でも、近ごろのイチゴは砂糖やコンデンスミルクの力を借りなくても十分甘い。次女も大きくなったことだし、今年は久しぶりにイチゴ狩りに行ってみるかな。そろそろ安くなった頃だろう。イチゴ狩りは春になるほど安くなるから。