サクラの樹液

昼休みの散歩で通りかかったら、桜の幹から樹液が出ていた。出てきて固まっている。琥珀色だ。これが地中に埋まって何万年とかの歳月が過ぎると石化して本当の琥珀になるわけだ。
樹液の中に虫が閉じ込められて琥珀にまでなると、虫入り琥珀として珍重される。この虫入り琥珀が特に注目されるようになったきっかけは、映画の「ジュラシックパーク」からだろう。マイケル・クライトン原作、スティーブン・スピルバーグ監督で映画化されたジュラシックパークでは、琥珀の中に閉じ込められていた中生代の「蚊」の腹の中にあった血液からDNAを抽出して「恐竜」を現代に蘇らせる。
虫入り琥珀は、DNAのタイムカプセルだ。でも実際には、蚊の腹の中の血液も石化しているわけだから、そこからDNAを抽出するなどということは並大抵ではない離れ業だろう。今の技術では不可能だ。恐竜を現代に蘇らせることなどきっとできない。でも、この先の未来ならば有り得るのかもしれない。どのくらいの未来かは分からない。もしかしたら数十年先に実現するかもしれないし、何万年も先かもしれない。人類が滅んで、その先の知的生物が実現するかもしれない。
だとすれば、僕の血を吸った蚊がこの樹液の芳香に惹きつけられその粘性の餌食になったとき、僕は近いか遠いか分からない未来に復活する可能性を得ることが出来るわけだ。