林道

近頃の林道は舗装されているところが多くて、走っていて気持ちが良い。木々の葉が覆いかぶさって日陰になっているし、そもそも車が少ない。たまに糸を出してぶら下がっていた芋虫に気づかずにぶつかってバイザーが汚れてしまったり、なんだかわからない虫が襟のあたりから入って来て胸のあたりで激しく暴れたりすると著しく気分を悪くすることもあるが、誰かにやられたわけでもないからあきらめも早い。
この時期は大雨の時期でもあるので、林道は土砂崩れの復旧工事など思わぬ通行止めに遮られることもある。通行止めの表示がありながら作業をしていないようなことが多いのだが、さりとてその先のカーブを曲がると工事中かもしれないし、大きな危険が待っているかもしれない。だから素直に表示に従う。ただ、来た道を戻るのもなんだか癪に障る気がするので、途中の分かれ道を曲がってみたくなることがある。こういう時は概ね痛い目に合うものだ。
先日もそのような気になって知らない道へ入ってみた。割と新しい舗装で気分が良い下りだったが、そういう時は良くないことが多い。案の定、少し行くとダートになってしまった。僕の単車はオンロード用の車種だし、そういう車種を買うぐらいだからオフロードが好きなわけではない。しかも、山道が雨でえぐられたとても走りづらい路面だった。四輪であったとしても僕の車だったら走れないような状況だった。それがしばらく続くと電信柱が見えてきた。これでほっとした。きっと民家がある。民家があれば舗装路になっている。そう思った。2〜3軒のかなり古びた小さな集落であったが、洗濯物が干されていたので無人化はしていないようだ。
集落を過ぎたが道は一向に走りやすくならない。あの家の人たちはいつもこんな道を上り下りしているのだと思うと、それだけでうんざりしてくる。冬の事や雪のことを考えて更に憂鬱になる。そしてようやく古い舗装面が残っている場所(写真)が出てきた。単車を止め、まずはほっとして水を飲んだ。