初秋の近所の草むら_5

シーズンが終わったオオキンケイギクの花は黒い塊になっていた。特定外来生物として駆除の対象になっている黄色い花を咲かせる植物だ。この黒い塊の中には多くの種が入っているだろうから、来年はこれらが発芽して花をつけることになる。法的には、これを摘んで焼くなどして発芽を未然に防がなければならない。でもそんなの面倒くさい。しかも知らない人の土地だ。そうして放置した僕は、本来罰せられる対象なのだろうか。
特定外来生物とは、考えてみれば国家が駆除対象と認定し駆除せよと言っているわけだから、なかなか思い切った政策とも言える。日本古来の生態系と種を守るために、大繁殖しそうな外来種を取り除くという高邁な理想があるわけだが、これを別なものと比べて考えてみると興味深いことになる。人間に例えるのが分かりやすいが生々しくもなるので、魚の「クニマス」で考えてみる。
かつては田沢湖の固有種であったクニマスは、実験のためにいくつかの湖に送られたことがあったという。その後、元の生息地であった田沢湖で絶滅が確認されたが、2010年に西湖で生存が確認されたので、「絶滅種」から「野生絶滅」に変わった。そして田沢湖への復帰運動も行われているとも伝えられる。
西湖のクニマスは美談として扱われているが、考えようによっては、西湖にとって完全に外来種だったわけだ。西湖の生態系に影響がなかったとは絶対に言えないだろう。そういう意味では、クニマスオオキンケイギクも立場はさほど変わらないようにも見える。