流木の恐竜

河原で遊んでいたら、「恐竜だ!」と言って次女が走り出した。石がごろごろしていて足元が悪いところで走られると、転んで泣くのではないかとひやひやする。次女は無事に流木まで辿り着いて、その上に跨った。
恐竜に跨るというのは何かのテレビの影響だろうか、僕も子どもの頃に「怪獣王子」というテレビ番組があって、ネッシーと呼ばれているアパトサウルスのような竜脚下目の恐竜が出てくる。主人公の少年はその頭の上に乗って、悪い恐竜をブーメランでやっつけるのだ。大好きだった。あの頃はブーメランが流行った。僕も弟も友達たちも何度も何度もブーメランを買ってもらった。ただ、売っているブーメランは小さいものばかりで、怪獣王子が持っているような大きなものはほとんどなく、投げてみても大して飛ぶことなく落ちてしまう。怪獣王子が画面で見せるように、敵を倒して軽やかに手元に戻ってくるなんていうことは多分一度も無かった。(敵を倒すことではなく、戻ってくることが)
僕は怪獣王子の本も買ってもらって、何度も読んで子どもながらにかなり研究した覚えがある。だから、イグアノドンが出ていて、その復元が古い形、つまり手にある角状の突起が鼻先に角のように付いている姿になっていたこともよく覚えている。それから、ディアトリマが出てきたのも覚えている。劇中ではジアトリマと言っていたことまで覚えている。第三紀の生物が恐竜と一緒に出てくるのも変な話だが、恐竜もジュラ紀白亜紀も一緒に出てくる。もとより、そいつらが現代に出てくるのだから、何紀であっても荒唐無稽さに変わりは無い。だいたい、地質年代など知ったこっちゃ無い当時の幼稚園児には、もはやどうでもよいことだ。でも、小学校の高学年ぐらいになって恐竜やら古生物やらの本を読んだときに、懐かしい怪獣王子に登場した恐竜などが出てきたときは、懐かしい友達の近況を知ったような気分になったものだ。
さて、次女が跨った恐竜だが、根っこの方をむいて跨ったということは、根っこ側が頭ということだろうか。そう思っても何の恐竜だかよくわからない。妻が言うには「きっと龍のこと」だそうだ。この流木はすっかり葉っぱも小枝も落ちてしまっているが、生命力は大したもので、幹から新しい葉を生やした小枝が何本も伸びていた。種類は何かのヤナギのようだ。