富士吉田市とその周辺が発祥の「吉田のうどん」は、近頃ずいぶん有名になった。僕が甲府に引っ越してきたころには、まだ店が甲府にはあまり無くて、吉田まで食べに行ってみたこともある。事前に地元のグルメ本を見てから行ったので、吉田のうどんについての予備知識はあったつもりだったが、それでも1cm×7mmぐらいの四角くてぶっとい断面と歯に吸い付くような固さには予想を超える驚きがあった。茹でたキャベツと味の濃い汁、じっくり煮込まれた肉にもうなった。
そんな吉田のうどんを職場の同僚と一緒に食べる機会があった。この十年で甲府にも店が増えた。一人は甲州人A、一人は埼玉出身B、そして千葉出身の僕、いずれも甲府市在住だ。Aは吉田のうどんを食べるのが久しぶり、Bは麺類好きでこの店もBのおすすめ。最初は吉田のうどんについて話していたが、そのうち讃岐うどんに話が移った。Bは讃岐うどんが好きで、一度は香川県に行ってたっぷり食べてみたいそうだ。しかも、関西各地でうどんの味が違い、それぞれの違いを楽しんでみたいという。Aは黙って聞いていた。僕は香川県に行ったことがあるので、うどん屋に置いてある牛スジのおでんが好きだと話した。でも、僕は讃岐うどんよりも吉田うどんの方が好きだと言った。大人しいAはそうなんですかという感じを出しつつ黙って聞いていた。Bは「えー、そうですか」と意外な様子だったので「ほうとうよりもこっちが好きだな」と言ったら、そこではじめてAが口を開いて「ほうとうよりもですかぁ?」と、予想外を突かれたという反応をした。Bも同様で、その後はAとBとで今度はほうとうの話になった。こういう無駄話は案外面白い。
写真と内容に関係は無い。