飛びもの

晩秋の空は「飛びもの」がよく目立つ。
左の橙色は、短い飛行機雲が夕日に照らされた様子。
右の黒いのは、町から山へ家路を急ぐカラスの様子。
夕暮れは慌しい。
今日の昼間のこと。仕事が休みで午前中のんびりと家で過ごし、昼食を食べに外へ出た。よく晴れており風も無いので、歩いていると熱くなるほどだった。特に日が当たった側の顔がほてるようで、帽子をかぶって来良かったと少し悔やんだほどだった。
食事を済ませ、腹ごなしを兼ねて少し遠回りで帰ってみる。スポーツ公園の陸上競技場の周囲を歩いていたときのこと、上の方から「おはよう、おはよう」と声をかけられた。声の方を振り向いてみると、高い照明塔にカラスが止まっていた。僕は口に両手をかざし、そのカラスに向かって「おはよう」と声を返してみた。カラスは聞こえないのか聞こえないフリをしているのか、こちらの方を見ることも無く顔をあちらこちらに向け直していた。今度は「この照明塔の下を通り過ぎたときにだけ声をかけることにしているのかもしれない」と思って、来た道を戻ってみた。しかしカラスは無反応だった。「方向が決まっているのかもしれない」と、歩みを折り返してみた。するとカラスは飛び去ってしまった。そして飛びながら「カー、カー」と普通の鳴き声を聞かせた。