ミニ鏡餅

正月が明けたせいなのか、ミニ鏡餅がひとつたったの20円で売られていた。でも、マズさも安価の理由だとするといけないので、とりあえず一つだけ買ってみた。「マズかったとしても20円だし、まあ諦めがつく。もしもそこそこ美味しかったとすればお得な買い物なわけだから、もう一度買いに行けば良い」そう思って家に帰った。
さあ、ここからが問題だ。小さいとは言え鏡餅なわけで、普通の餅の扱いとは違って一応は置物にしてみる。どうせ暮れには鏡餅を買わなかったのでちょうど良かった。ところがそうなると今度は何時食べるかが問題になってしまった。特に何も考えずに去年の流行語に倣って「今でしょ!」と、とっとと食べれば良いのかもしれないが、鏡餅なので鏡開きの日にしなければならないのではないかと考え出してしまったのだ。なんか、縁起みたいなものが絡んでくるといろいろとやり辛い。鏡開きよりも前にこのたったひとつの鏡餅を食べてしまったら、本当の鏡開きの日に開く餅が無いことになる。それで素直に鏡開きまで待つとすると、そんな先まで20円の餅が売れ残っているとも思えない。
もしも鏡開きの日にこの餅を食べたとき、マズかったとすれば「ああ良かった、あのとき縁起を考えずに食べてしまわなくって」と自分の賢明さを思って僕の心は晴れるだろうか。そして一方、もしも旨かったら自分の決断の甘さを後悔するのだろうか。ああ、悩ましい。あの日あの時あの店へ行かなければ、僕は今こんなに悩まずに済んだというのに。