擬態

まるで枯れ葉のようだ。近づいて見るとその精巧さにあらためて感激する。少々近づかれたり写真を撮られたぐらいではピクリとも動かない、堂々とした擬態だ。
しかし残念なのは取り付く場所を間違ってしまったことだ。本物の枯葉がたくさんある場所でこそこの擬態の効果が達成されるのだが、どうしたことかアパートの階段の手すりに取り付いてしまった。おかげで僕はその精巧な擬態を見て撮ることができた。ここ数日の急な涼しさが昆虫の勘を狂わせたのだろうか。
人間社会でもまるでこんな擬態のような人がいるものだ。とにかく目立たないようにじっと息を潜めている。仕事も積極的に何かをするということは無い。ポカや手抜きは多くても、周囲の人々がなんとなくカバーしてしまうから表面に出てくることもめったに無い。そして、マイナス評価の組織の中ではその生き方が非常に好都合に働くものだ。そういう状態では仕事の達成感みたいなのは得づらいだろうと思うのだが、他の人の成功にはちゃっかり乗って達成感を得ているらしい。