登山道の明かり

夜中に目が覚めたら眠れなくなってしまった。外を見たら晴れているようだったので、ベランダに出てみた。夏の大三角が西に傾いていた。富士山の方向に目をやると、富士山の形は判らないが、そのあたりが星のように光っていた。これは、と思って写真を撮ってみると、山稜の明かりだった。
僕は中学三年生の夏に富士山に登る機会があった。夕方に千葉を出て、中央自動車道を通って夜に五合目に着くバスツアー。そこから夜通し登り続けて、朝、山頂着というもの。世界遺産になる頃からテレビや新聞でずいぶん批判されている、いわゆる弾丸登山だった。五合目で買った木の杖に、山小屋で焼印をしてもらいながら登るのだが、焼印を熱するときに山小屋のおじさんが鞴(ふいご)を使っていて、そのときに初めて見たのだった。雲海の上にスバルが昇って来た様子は印象的だった。水平よりも下に見えた。九合目あたりで御来光になった。真夏なのに寒かった。