小学校の低学年の頃に買ってもらった植物図鑑は、春夏秋冬に分けて植物の絵と名前と特徴が書かれていた。今思えば、植物には春夏秋冬それぞれの姿があるわけだが、その図鑑は花の時期で分けられていた。ヒガンバナは秋の植物のページにあった。そして今、近所を歩くとあちらこちらで見ることが出来る。
図鑑で見たヒガンバナは、他の花とは違ってとても見ごたえのある綺麗なものだった。だから、そのページをめくるといつもヒガンバナが目に付いた。それから後、初めてヒガンバナを見たのは中学生になってからのことだったと思う。図鑑で見て美しいと思っていた花だったのだが、実物を見たときは少なからず驚いた。そして気味悪く感じた。地面から茎だけが伸び花が咲いていて、それが束になっている。それが気味悪い。そして同じ頃にそれが毒草だとも知った。
ヒガンバナは「彼岸花」と書くようだが、花の見頃がお彼岸の頃だということから来ているらしい。でも、「それを食べたら彼岸行き」というような意味もあるという。図鑑で見たときにはその美しさに感心し見てみたいと思っていたのに、見てしまったらむしろその途端に美しいと思っていた気持ちは気味悪さに変わり、毒草だと知って恐ろしさも加わった。