ソーラーマックスの看板

ちょっと前のことだが、職場の倉庫みたいな場所の奥からこんなものが出てきた。IMAX映画作品「SOLAR MAX」の宣伝看板だ。11年も前のものだが、それにしても当時は大きな看板を作ったものだ。ベニヤ板2枚分とちょっとの大きさだ。あまりの懐かしさに携帯電話で写真を撮っておいた。後で気づいたらQVGAで撮っていたので画像が悪いのが難点。今頃は灰になっているだろうからもう撮り直しができない。とは言え、偶然再会できたのだから写真が撮れただけでもラッキーだ。
この作品を製作したのはシカゴの科学館で、日本の太陽観測衛星「ようこう」が撮影した何年分もの映像を使ったオープニング映像が大変迫力があった。とにかく全編に渡って迫力があってぞくぞくしているうちにクライマックスとなる。何十回も見ただろうと思うが、それでもよかった。「こういうの作る機会は無いだろうなぁ」とか「アメリカの科学館は凄いなぁ」と思ったりしていた。
あの当時、IMAXや国産のASTROVISIONで掛けられる大型映像作品はほとんどがアメリカで製作された作品で、日本で作られるものは少なかった。しかも70mm15PのIMAXフォーマットや70mm10PのASTROVISIONフォーマットのカメラで撮られたものだけでなく、35mm8Pで撮影したフィルムをブローアップしてプリントしている作品も少なくなかった。アメリカの作品ではロケ撮影に複数台のIMAXカメラを入れ、「よくこんな場所にクレーンや台車を入れたものだ」と驚くようなカットが少なくなかった。日本の作品はカメラ1台で三脚の上でパーンやチルトをしているだけのカットがほとんどだったので、そういう意味でもアメリカの凄さに圧倒された。もちろん日本のスタッフは、アメリカの製作費の1/10やそれよりも遥かに少ない予算の中で様々工夫していて「これは良い」と思わせる作品もあったが、それでもアメリカ作品に肩を並べるようなものではなかった。映像文化が貧相な日本では、映像製作に投資する意識も低い。一方、アメリカでは大きな投資が行われ、良質な作品が作られ才能も育つ。そしてアメリカで製作された作品が日本に輸入され、日本のシアターから製作資金を回収して行った。
そして今、フィルムの時代はほぼ終わってしまった。日本の映像文化が欧米に遠く離されたまま、追いつくことができぬままに。大型映像の分野は、フィルムからデジタルに移ってしまった。1990年頃、五藤光学のSさんが、大型映像がデジタルに塗り換わる時期を2010年と予言していたが、大当たりしてる。