神社を見てからしばらく、その近所を散歩していた。集落を出ると葡萄畑が広がり、ところどころに桃や梅の木があった。そんな景色の道を歩いていると、妻が言った。
「落ちたやつでもいいから欲しいぐらいだね」
その視線の先を見ると、美味しそうに色づいた桃の実が土の上にたくさん落ちていた。
「そうだね、旨そうだ」と、僕が答えた。
遠目で見たところでは、形が良くないとか、虫の穴があるとかいう難点があるようだが、十分に美味しそうだった。
先ほどからぽつりぽつりと降り出した雨が本格的になりそうな気配を感じた。それで少し早足になった。