巨木

富士吉田の浅間神社には、「富士太郎杉」という名の巨木がある。策に囲まれ表札が立ち、幹には綱が巻かれ、霊木の印象を醸している。
僕はその杉を左に見て段を上がり、お賽銭を入れて祈った。そして振り返ると、富士太郎杉の背中が見え、一拍置いたところで驚いた。樹皮に横線が見える。これは横方向に刃物で筋を付けたものではない。樹皮が貼られているのだ。腐れが出てしまったのだろうか、理由は分からないが、他の木から剥ぎ取った樹皮が貼り付けられている。これは樹皮がやがて木の生体の一部として癒合するような治療の一種なのだろうか、それとも何かを隠してパッと見だけは分からないようにするためだろうか。
遠くから見れば立派な木だが、近くに行って裏に回れば継ぎ接ぎだらけ。